再エネ事例(バイオマス編)

1. 山形県飯豊町 ながめやまバイオガス発電所 地元の環境問題からスタート、環境保全型農業

2 岩手県久慈市 木質バイオマス熱供給施設・侍浜事業所プラント 地元の未利用資源とインフラをマッチング

3 東京都大田区 城南島第2飼料化センター 地域の廃棄食品を飼料原料と電気に

4 宮崎県串間市 大生(おおばえ)黒潮発電所 日本初のペレット場製造工場併設したガス化発電所

5 群馬県上野村 上野村木質バイオマス発電所 村の発展と経済自立に貢献

6 福島県福島市 土湯温泉バイナリー発電所 原発事故からの復興を目指し再エネ利用のまちづくり

7 群馬県藤岡町 全国初!廃食用油利用の藤岡バイオマス発電、14年間の市民参加を生かし

8  神奈川県川崎市 川崎バイオマス発電所と京浜バイオマス発電所~地産地消の住宅廃材利用VS輸入木質ペレット利用~

9【番外編 水素】・水素社会で未来社会を描けるか? 

 

 


その1. 

 

山形県飯豊町ながめやまバイオガス発電所  地元の環境問題からスタート、環境保全型農業

ながめやまバイオガス発電所全景 @東北おひさま発電所㈱
ながめやまバイオガス発電所全景 @東北おひさま発電所㈱

山形県飯豊町 

ながめやまバイオガス発電所

地元の環境問題からスタート、環境保全型農業

 

*設置者 東北おひさま発電所㈱   *発電出力 500kW(年間売電量約360kWh

 

 「地元の環境問題を何とか解決したいと思いからスタートしました。日本三大和牛の一つ米沢牛の4割を生産する山形県飯豊町(いいでまち)。誇らしい産業といいながら、地域住民とバッテイグしている状況でありました」と東北おひさま発電株式会社(所在:山形県長井市、資本金5000万円)の後藤博信代表取締役は視察会で言い出しました。オーストラリアなどと競合するためには大規模化が必要でした。牛1000頭規模になると、毎日牛糞25t。臭いも大変なものだったそうのです。後藤さんは証券会社の元副社長、故郷に帰って飯田町の副町長を2年勤めた経験の持ち主。「経営なら分かりますが、バイオマス利用は初めてのこと。素人ながら勉強してきました」と苦労を話す。

 

 同社はこれまで山形県と福島県に4ヶ所のメガソーラーと小水力発電所1ヶ所を建設してきました。バイオガス発電はこれが初。地域住民の代表者や牧場経営者と北海道に視察に行き、何度も話し合いを重ね、20201015日「ながめやまバイオガス発電所」を稼働させました。

 

発電所は、周囲にある5つの畜産業者の肥育施設から地下パイプラインで糞を運び、更に菓子クズ・糖蜜などの副原料も混入させ40日間ほど発酵させたバイオガスで発電。39/kWhのFIT価格で売電しています。発生するバイオガスはメタンが約60%、二酸化炭素が約40%。有害な硫化水素と燃焼時の亜硫酸ガスは脱硫処理しています。この眺山地内5ヶ所の畜産業家畜排せつ物は年間約12,000t。地域の食品加工会社8社から動植物性残渣物年約4800tも利用して、熱電併給250kW×2基で一般世帯約900世帯分の年間約360kWhを発電する予定です。発電機の冷却水の熱は、原料槽と発酵槽の加湿や融雪、また熱消毒に使われています。残った液肥約1,450/年は隣接する牧場に、また発酵残渣約1700/年は牛舎内の敷料として100%残さず利用されます。

 

 牛舎新築も含め総工事費は約10億円。1/3は農林水産省6次産業化の補助金で賄いました。以前は、牛糞トン当たり1000円で処理してもらっていました。あるいは処理するところがないので、自分でやるしかなかったこともありました。また、食肉用の肥育牛の糞は含水率が低く、ぎゅうぎゅう詰めの牛舎では糞が固められてしまい処理が難しく、特に豪雪地帯の冬場は大変でした。しかし、新しい牛舎では機械化して「人の手がほとんどかからなくなりました」。毎日定期的に餌やった後、一定の時間に糞尿するので一斉に自動的に糞を集めます=著者イラスト図。「米沢牛は女の子なので糞尿は後ろにしかでません」。でも、「牛は育たないのではという心配もあり、兼業農家には賭けのような状態で選択してもらいました」。

 

 更に、今までの現地産廃業者とどう折り合いをつけたかも難しいところでした。一社だけの産廃業者だけでなく、5年契約ですべての業者に入ってもらいました。タンクへの投入など、一連をやってもらっています。

  

 発電所のキャッチフレーズは「“自立した地域”を創る―子どもたちの未来のために・・・3.11を心に刻んで」。「人口減少の時代を迎えているなか、地域コミュニティが自分の足で立つ必要があります。そして、脱炭素化と循環型社会を目指していきます」と後藤さんは強調していました。

 

2120.11.21撮影・取材 高橋 (©は提供写真)

初出「市民発電台帳2021」

ながめやまバイオガス発電所発酵槽
ながめやまバイオガス発電所発酵槽
牛糞を自動的に発酵槽へ運ぶ
牛糞を自動的に発酵槽へ運ぶ

その2 岩手県久慈市

 

木質バイオマス熱供給施設・侍浜事業所プラント   地元の未利用資源とインフラをマッチング

木質バイオマス熱供給施設・侍浜事業所プラント ©久慈バイオマスエネルギー㈱ 
木質バイオマス熱供給施設・侍浜事業所プラント ©久慈バイオマスエネルギー㈱ 

岩手県久慈市

木質バイオマス熱供給施設・侍浜事業所プラント

地元の未利用資源とインフラをマッチング

 

その1

 

*設置者:久慈バイオスマスエネルギー()*蒸気ボイラ出力0.7t/h 温水1200k

 

 岩手県久慈市にある「久慈バイオマスエネルギー株式会社」は、「木を燃やして熱を売る、発電はしない」というバイオマス利用の中でも全国的に珍しい産業振興を行っています。 原料の9割は樹皮(バーク)です。樹皮は焼却炉で燃やされるだけの厄介者。かつては川や山に捨てられることも、場合によってはお金を出して処理してもらうこともありました。この未利用資源を活用すれば、通常の木質チップより1/4から1/5位格安で手にいれることできます。

 

 久慈地区には製材所が1213軒あります。こうした地元の資源とインフラを活用して何かマッチングできないか、と親の稼業を継いだ日當(ひなた)和孝さんは考えました。津波で親が建てた製材所は破壊され、保険は出ない中、多額の借金で再建し「覚悟ができた」からなおさらでした。そこで、久慈地方の森林組合、市の林業水産課や県の職員も含め勉強会を重ねました。そのネットワークが後で事業の実現に向けて大いに役立ったのです。

 

【なぜFITで発電しなかったか? 】

 

 当初、FIT利用の発電も検討しました。事業成立のためには、5000kW以上の大きな設備が必要になります。それでは地元の木材供給では賄いきれません。本来は、地元の林業の育成のためのスタートですから、足りない分は海外輸入では目的から外れてしまいます。また、岩手県においても木質バイオマス発電所が乱立して、県内からでも木質原料の確保が簡単ではありません。その上、送電系統が不足しているということで、FIT認定が得られない。そうした理由で断念しました。

 

 東日本震災を経て、漁船の95%が津波で壊され流されました。でも、振り返ったら山はそのまま。市の面積の86%が森林です。東北沿岸にある木材の主要出荷先も大半被災して、木材の行き先を失っていました。地元での利用先の確保が必要とされていました。そこで、立地条件を考えて「身の丈にあったエネルギー利用」を図り、木材を燃やして、蒸気は配管で殺菌施設に、温水は熱導管で直接熱を供給し、プラントの隣に新設した椎茸ハウスに使うことにしました。 

プラント装置
プラント装置

その2

【いかに樹皮利用の困難さを克服したか】

 

 でも、従来、樹皮は搬送や乾燥が難しく、燃焼炉内にクリンカ(固まった灰)が発生しやすく、また、形状が不ぞろいで扱いにくい、使い道があまりないとされていました。それらの課題を解決すれば、樹皮は、発熱量が木部に劣っていることはありません。まず運搬は地域内の林家や製材業者が運んでくれます。また、地域には製紙用チップを製造しているところがあり、供給制限された時には余ったチップを届けてくれます。間伐材、端材、廃材も利用しています。地域のインフラを活用して、需要側から約30t/日の原料規模にしました。次に樹皮の破砕は苦労の連続でした。台風被害で発生した流木もテスト、ハンマー式破砕機もいろいろテスト。破壊の中で詰まる、時間がかかりすぎるなど苦慮しました。

 

 現在では、既存のコマツの自走式木材破砕機リフォレを改造してうまく使っています=写真。これは、土地造成工事で発生する伐根・枝葉や、ダムなどの貯水池の流木等木質系不要材用に、また減量化によって運搬費を大幅に削減できるように開発されたものです。次にボイラの排熱を使って、60%のチップ含水率を15%にしました。そうすることによって、原料は軽くなり、風送ができるようになりました。コンベアよりも閉寒リスクを小さくすることができます。

 

 椎茸栽培には12-20℃のきめこまかな温度管理が必要です。夏場には温水は必要でなくなり、逆に冷却しなければなりません。そこで余る熱を乾チップにしました。湿チップを乾チップにすると、重量当たりのカロリーは倍になります。市も温水プールを重油からチップ用ボイラに変更してくれました。やがては福祉施設や学校、工場にも販路を拡大する計画です。そうすることによって、熱利用の課題である距離の制約や季節変動の課題を、熱のオフライン利用で克服できます。

 

 さらに、不要となった椎茸の菌床の利用も開始しました。従来は肥料として農家に提供していましたが、ハウス60棟となると余ります。そこで菌床を余熱で乾燥させて、ボイラの燃料にすることにしました。 

いかに樹皮利用の困難さを克服したか
いかに樹皮利用の困難さを克服したか
コマツの自走式木材破砕機リフォレを改造
コマツの自走式木材破砕機リフォレを改造
プラントの熱利用で栽培のキノコ
プラントの熱利用で栽培のキノコ

その3

【補助金申請につまずく】

 

 補助金を使って木質バイオマスの地域利用調査事業を終え、詳細検討・試算を継続。14年に日當(ひなた)和孝さんは地域の仲間と協力して、自らは無給の代表取締役に就いて久慈バイオマスエネルギー()を設立しました。同年、林野庁補助金事業に採用された。

 

 ところが、市から格安で丘陵地帯を借り受けることができましたが、環境配慮の造成地づくりに手間取りました。この助成金には1年以内に完成させなければならないという縛りがあり、期間内建設は困難となり、同補助金を得ることを断念しました。次に「地域再生可能エネルギー熱導入促進事業」に採択され、これは年度繰り越しが可能でした。1/3の補助金のところ、市が関与することで補助率1/2になりました。また、地元の農林漁業者やパートナー企業、銀行から資金を集めることができました。()農林漁場成長産業化支援機構をはじめ、地元のみちのく銀行からは「全国各地で成立している『農林漁業成長産業ファンド』において、初の木質バイオマス案件」として応援ファンドをいただきました。こうしたことも勉強会で行政をはじめ、皆さんとつながりができたお陰でもありました。

 

 一方、椎茸栽培については地元ですでに40棟のハウスをもつ有限会社織戸きのこ園が参加してくれました。既存のハウスの重油費用などから換算して椎茸菌床1個当たりの経費単価を割り出して、菌床の総数に生産単価を掛けて熱を販売する契約ができました。隣接のハウスでは現在80人を雇い、近くに雇用者向けの寮も新築しました。

 ところが、当初の補助金は3棟分しかでず、建設が大幅に遅れました。16年に熱供給プラントが先に完成・稼働し従業員も3人雇ったので、資金計画に大幅な狂いが生じてしまいました。

 

 でも、椎茸販売には苦労なく、安定したサプライヤーとして本州で1番の椎茸生産地になっています。当時、必ずしも幸いだとは言えませんが、福島産の路地ものが放射能の影響や風評被害で落ち込んだこともありました。

 

 このブラントはまだまだ確立した事業ではありません。経済的にも苦しいですが、久慈モデルとして地域資源・エネルギーを地域で使い、乾チップでも地域のインフラ構築をすることを目指します。 

(同株式会社は地域の大賞の他、18年度「第1回エコプロアワード 農林水産大臣賞」、同年「新エネルギー大賞 新エネルギー財団会長」を受賞しています)

初出「市民発電台帳2020」 取材・撮影 2020.9.16 (©は除く) 
会社概要 – マルヒ製材 (maruhiseizai.com)
越戸きのこ園|岩手県久慈市にて菌床しいたけ栽培。循環型農業を実践しています。 (k-kinokoen.com)
久慈地方森林組合 概要 (sinrin-y.com)

こぼれ話 東日本大震災がきっかけ
  取材の前日、久慈市をまわったという話をしたら、日當さんは自分の経営する会社に連れて行ってくれました。
 多くの日本の市民発電所は東日本大震災をきっかけに発電事業に着手してきたのです。
 1986年4月26日のチェルノブイル原子力発電所事故では日本では大きなうねりにはならなかったようですが、実際に身近に経験したことは違います。
チェルノブイリ原子力発電所事故 - Wikipedia

10年目にしても津波の爪痕を残す日當さんのマルヒ製材の倉庫。 会社概要 – マルヒ製材 (maruhiseizai.com)
10年目にしても津波の爪痕を残す日當さんのマルヒ製材の倉庫。 会社概要 – マルヒ製材 (maruhiseizai.com)
久慈市は過去の経験から津波の死者は比較に少なかったそうです。でも、海辺に供養碑を見つけました。
久慈市は過去の経験から津波の死者は比較に少なかったそうです。でも、海辺に供養碑を見つけました。

【読者の声】

・素晴らしいですね。

・自分はこの材木の樹皮を活用した三陸のリサイクル農法を知ってます。粉砕し畑にまき、耕し一年間微生物に分解させ作物を植えると畑の土が農具要らずでサラサラになり草も根から抜けるフカフカの土壌になります。実際に国では樹皮は産業廃棄物と位置付けられてる物で色々な再利用は可能なんですがね。焼却灰はお金になる物と自分は視てます。

 

高橋

久慈バイオスマスエネルギー こぼれ話

 「おはようございます」と女性たちが椎茸工場に入ってきました。写真は顔が判別しないようにして、お願いして撮影したものです。ここで働く80名は見た限りは、多くは外国人実習生でした。(ネパール人のようにも見えました。聞かなかったのは残念)

 「地元の人を採用したくても、なかなか人は集まらないのですよ」。「場合によっては日本人のパートより給料が高いこともあるようです」。「近くの寮で共同生活しています」

 「ここから寮は見えますか? 」。帰りにその寮を見せてくれましたが、表からは新築のように見えました。

 

 現場で見ないと、分からない。


その3

東京都大田区

 

城南島第2飼料化センター  地域の廃棄食品を飼料原料と電気に

城南島第2飼料化センター内部
城南島第2飼料化センター内部

その3

東京都大田区

城南島第2飼料化センター 

地域の廃棄食品を飼料原料と電気に

バイオガスで14,260kWh発電

城南島第2飼料化センターでは、地域の廃棄食品から生まれる飼料原料と電気を作っています。東京都大田区にある同プラントは、株式会社アルフォが東京都スーパーエタウン事業に応募し、食品廃棄分の飼料化設備にバイオガスによる発電設備を組み合わせことで、2015年に選定されました。そして、20177月にプラントを竣工させました。

 

 「予定発電14,260kWh。標準家庭の400世帯分の電気をFIT価格で販売していますが、もっと大規模にしないと、環境価値だけで(発電事業は)経済的にはあわないです」。第2工場はスーパーエコタウンの選定で許可を受けやすくなりましたが、一切の補助金はありません。

 

同社はもともと事業系廃棄物を収集する会社。資源循環型産業にシフトしようと、食品リサイクルに乗り出しました。受け入れ対象となる主な食品は、食品メーカー、食品卸売業者、スーパーやコンビニ、飲食店など、今まで捨てられていた廃棄食品を飼料化して販売するというものです。例えば、川崎市の小学校33校からも給食残飯も受け入れていています。

 

搬入される食品廃棄物を廃食用油と混合し、装置を使い約80%の水分を乾燥させます。「天ぷら方式」とも呼ばれ、工場内は天ぷらを揚げたようなにおいが広がります。その後、不純物を除いて、食品廃棄物が養鶏・養豚用の配合飼料原料に生まれ変わります。受け入れ管理は厳しくチェックされています。弁当の売れ残りまでは可能で、プラスチックまでは分別できますが、紙やたばこ類は分別できません。受け入れ生ゴミは190トン(最大300トン)。キロ当たり23円を支払ってもらい引き受け、出来上がった製品を飼料原料として販売しています。

 

また、食品廃棄分を油圧減圧乾燥機設備に投入する前に、一定量の固液分離を行い、分離液を20日間発酵槽で発酵させ、乾式脱硫塔を通してドイツ製のガスタービン(GE6403台で発電しています。

 

 「企業が率先して環境保全に対する取り組みを進めていくことは、もはやあらゆる業界に共通した課題であり企業の責務といえるのではないでしょうか。私たちは、次の世代によりよい生活環境を日気づいていくため、微力ながら資源循環型の社会循環のお手伝いをしたいと考えています」と同社の熊木浩代表取締役は語っています(パンフレットより)。

 

取材・撮影 2018.8.30 追加取材 (川崎市の食品ロスとSDGs施設見学会)

初出「市民発電所台帳2019」

 

 

城南島第2飼料化センター 食品残渣はビニールまで分別なしに可能
城南島第2飼料化センター 食品残渣はビニールまで分別なしに可能
城南島第2飼料化センター発酵槽
城南島第2飼料化センター発酵槽
城南島第2飼料化センターの発電機
城南島第2飼料化センターの発電機

その4

宮崎県串間市

 

大生黒潮発電所   日本初のペレット場製造工場併設したガス化発電所

大生黒潮発電所全景
大生黒潮発電所全景

その4

宮崎県串間市

大生(おおばえ)黒潮発電所

日本初のペレット場製造工場併設したガス化発電所

 

その1 杉の丸太生産量日本一の森林有効活用し、山も地域も元気に

 

 先進事例に続けとペレットのガス化発電を行いましたが、そんな簡単にはいきませんでした。

 

 大生(おおばえ)黒潮発電所は、地元の未利用材を有効活用して、同じ敷地内にペレットの製造から発電まで一貫して行っています。想定年間売電量は一般家庭の4,000世帯分。

くしま木質バイオマス株式会社(宮崎県串間市、堀口三千年社長)が事業運営を行い、20188月稼働を始めました。

 

 宮崎県は豊富な森林資源を有し、杉の丸太生産量は27年連続日本一。木材には山の木を間引く必要があります。間伐後の山には太陽の光が差し込み、健康な山に育ちます。その時に切り出された未利用材を、地元関係者や森林組会から年間約19000t購入します。丸太の購入価格7,000円(トン当たり税別、発電所着、証明書付)。「消費地まで運ぶ必要があって大手企業はなかなか進出してきません。森林資源の有効活用として地元木材で電気を作り、電線を引っ張れば地域の活力になると考えました」(堀口社長)

 

2018.9.7 取材・撮影 高橋 

初出「市民発電台帳2019」

 

大生黒潮発電所
大生黒潮発電所
大生黒潮発電所
大生黒潮発電所

大生(おおばえ)黒潮発電所日本初のペレット場製造工場併設したガス化発電所

 

その2 一度は事業の断念も、「世の中のためになると考え」事業化

 

 しかし、事業化には機種選定などに苦労し、一度は事業の断念も考えたそうです。やがて、FIT制度ができ、小規模区分(出力2000KW未満)40円で/kWh売電することで「世の中のためになると考え」事業化に乗り出しました。小型ペレット発電システムを10機導入、毎時2tできるペレット工場も新設しました。さらに、余った温水も再利用してバイナリー発電(沸点の低い媒体を加熱・蒸発させてその蒸気でタービンを回す方式)でも発電しています。発電量は1,940kw

 

シン・エナジー株式会社が設計・施工と発電設備維持も行っています。資本は地元企業が60%、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構(環境省地域低炭素促進ファンド事業執行団体)からも出資しています。林業・ペレット加工・発電で合計約20人の雇用をしました。

 

しかし、稼働半年経過した取材時点では、発電機10台(小規模分散型・1165kW)の稼働は半分程度。環境にも大きく左右され、一台、一台日替わりで違います。確実に安定稼働してから、10台を稼働するそうです。そして、稼働開始から10ヶ月後の191月にフル稼働に達しました。

 

難しいのは木材のガス化。途中でやめた人も一杯います。実際に上野村バイオマス発電所(3ページ後)などを視察、同じドイツ・ブルクハルト社製木質ペレットガス化併給システム導入をしましたが、参考にした高山や上野村とは違っていました」。

 

特に、杉の原木は乾きにくい。そこで、コンベア式温水おが粉乾燥装置を設置し、破断した未乾燥のおが粉は、原木の皮を燃やすパークボイラーと発電装置の両方の温水を使って、乾燥おが粉にしています。それをペレット製造設備に移動。木質ペレットは一般販売する他、串間市内に開業する温泉施設に供給することも決まっています。「ペレット製造には運転データなどだけでは、不十分です。職人的な運転技術が必要です。運転要員の技術向上には時間がかかっており、発生したトラブルは必要なステップだったと考えています」と堀口社長は強調します。

 

 このように、この発電事業は「林業育成とエネルギー創出の結果、経済圏が大きくなり持続可能な地方創生もモデル」を目指しています。更に、第2発電所の建設についても視野に入れています。

 

#くしま木質バイオマス株式会社 #大生黒潮発電所

撮影:高橋 2018.9.7 (自由にお使いください)

NPO法人農都会議の「九州バイオマス発電所見学・フィルドワーク」に参加。

その後の情報も取材し、「市民発電所台帳2018」にて発表。

 

大生黒潮発電所発電機
大生黒潮発電所発電機

その5 

群馬県上野村 

 

上野村木質バイオマス発電所  村の発展と経済自立に貢献

その5

群馬県上野村

上野村木質バイオマス発電所

村の発展と経済自立に貢献

 

人口1159人の群馬県上野村のという山間部の小さな村に、2018年約300人が視察に訪れました。「村は衰退していずれは消滅する」という思いで、村の林業を産業化しました。

 

入口から出口まで地域内で完結する林業を起こし、150人の雇用を生み出して、Iターン(都心部で生まれ育った人が地方の企業に転職し移住すること)の受け皿も作りました」と神田強平氏(1968年上野村役場入職依頼の村幹部職から立候補、09年~17年上野村村長)は197月に東京で開催された「地域型バイオマスフォーラム」で語っています。

 

かつて群馬のチベットと言われた村の95%が森林。森林があっても切り出せなかったため人工林が少なく、広葉樹林が6割。そんな小さな村でも一年間で4.6億円がエネルギーにかかる費用として村外に支払われていました。そこで、この費用を一部でも村の中にもってくれば、村は潤い、職場も作れるはずだと考えました。

 

そこで、村の木だけを利用して作るペレットの工場の建設から始めました。生産される年間1600トンのペレットはほぼすべて村内で消費しています。さらに、現代の里山として森を守り、25年に1度の伐採で森林を使い回す計画です。人工林とは違い、広葉樹は伐採しても、自然と株から新芽が芽生えるという持続可能な森といえましょう。

 

それから、そのペレットからエネルギーを作ろうと、「全国ありとあらゆる施設を見ましたが、我々に必要なものは日本にはなかった」です。

 

そこで15年、ドイツ・ブルクハルト社の木質ペレットガス化熱電併給装置を日本で初導入(世界では118号機目)しました。建設費は35千万円。国の補助金を活用して造りました。自動運転で、稼働状況はネットでも確認可能です。

 

木質ペレットガス化装置と発電と熱を供給する装置の二つに大きく分かれています。ベレットをガス化して、そのガスをエンジンで燃焼し、180kWの発電と90°Cの温水を供給します(2019年原稿チェック時には温水の供給はされていなと回答しれました)。その電気と熱は、隣接施設のキノコ工場にも使われています。そこの付加価値の高い農産物は村の重要な収入源となっています。「小さいかもしれないが、村の木でやれる範囲で管理しています」。

  

このように上野村の木質バイオマス発電所は、村の発展と経済自立に役立っています。

 

初出「市民発電所台帳2019」

上野村木質バイオマス発電所   ガス化装置
上野村木質バイオマス発電所  ガス化装置
上野村木質バイオマス発電所   発電機
上野村木質バイオマス発電所  発電機
上野村木質バイオマス発電所   外部
上野村木質バイオマス発電所  外部
村内の発電所とは別なところにあるペレット工場
村内の発電所とは別なところにあるペレット工場
上野村木質バイオマス発電所 取材こぼれ話
 上野村はバイオマス発電所の「ファーストペンギン」的存在。2015年12月に市民電力連絡会で視察。2017年4月には、原発ゼロ市民共同かわさき発電所で視察を企画、実行しました。

  その時、お世話になったのが、コメントをいただいた元(一社)上野村産業情報センターの三枝さん。2019年に原稿をチェックしてもらうときに、連絡すると退職したとのこと。

 でも、この記事でface bookの友達でもないのに、見つけていただき、投稿いただきました。また、上野村でご活躍していると知り、とてもうれしく思いました。

6 福島県福島市 

 

土湯温泉バイナリー発電所  原発事故からの復興を目指し 再エネ利用のまちづくり

土湯温泉バイナリー発電所
土湯温泉バイナリー発電所

その5

福島県福島市

土湯温泉バイナリー発電所

原発事故からの復興を目指し再エネ利用のまちづくり

 

福島市土湯温泉町では、東日本大震災と風評被害の影響で、一千年の名湯も宿泊収容定員数は半減し、観光客は激減。16軒あった宿は5軒つぶれ、町の存続に係る危機的な状況になりました。そこで201110月には「土湯温泉町復興再生協議会」を設立し、打開策を講じてきました。そして土湯温泉町の復興と振興を目指すため、地元資本による再生可能エネルギーを活用した「株式会社元気アップつちゆ」を誕生されたのです。

 

きっかけはたまたまテレビで見てドイツまで現地調査をしたことです。その結果、地元に豊富にある「温泉」と「水」を利用した再生可能エネルギーを核とする温泉観光づくりを推進することにしました。「湯遊つちゆ温泉協同組合」と「NPO土湯温泉観光まちづくり協議会」の出資で201210月に会社を設立し、2015年4月に土湯温泉町東鴉川水力発電所(定格出力140kw、年間発電量約90kwh、総事業約3.2億円)の発電を、同年11月には土湯温泉16号源泉バイナリー発電所(発電出力400kw、年間発電量約260kwh、総事業費約7億円『補助金10%と融資』)の発電を開始しました。得られた収入は投資分を償却後、まちづくりと観光地づくりを中心とした町の復興に利用する方針です。

 

このバイナリー発電は地熱発電方式。土湯温泉は130℃前後の温泉水が沸いて、湧き水を加えて冷ましていました。この熱湯を使って熱交換器を使って、ノルマンペンタン(沸点36.1℃)を気化させてタービンを回して発電をしています。大規模な地熱発電に比べて、環境への影響や温泉枯渇の危険性が少なく、設備投資が安価です。しかし、国立公園内にあるため13件の許認可申請に難儀。例えば、施設の基礎工事はできないため、ブロックを置いてコンテナーを使用するなど工夫をしました。未利用熱でオニテナガエビの養殖も開始、エビ釣り堀も始めました。一方、水力発電は木の枝や落ち葉によって止まることもあり、苦戦中です。

 

そして今や土湯温泉環境まちづくり協議会の再生可能エネルギーツアーは観光の目玉のひとつとなり、これまで約1万人名が参加し、まちおこしにも貢献しています。

 

初出「市民発電所台帳2018」

 

 

土湯温泉バイナリー発電所 電気整備はブロックを置いてコンテナーを使用
土湯温泉バイナリー発電所 電気整備はブロックを置いてコンテナーを使用
熱でオニテナガエビの養殖も開始
熱でオニテナガエビの養殖も開始
土湯温泉町東鴉川水力発電所
土湯温泉町東鴉川水力発電所
土湯温泉町東鴉川水力発電所外部
土湯温泉町東鴉川水力発電所外部

その7

群馬県藤岡町

 

全国初!廃食用油利用の藤岡バイオマス発電所、    14年間の市民参加を生かし

廃食用油利用の藤岡バイオマス発電所
廃食用油利用の藤岡バイオマス発電所

その7

群馬県藤岡町

全国初!廃食用油利用の藤岡バイオマス発電、 

14年間の市民参加を生かし


 20164月、群馬県藤岡市で配食用の油を利用したバイオマス発電所が運転を開始、毎日約2000ℓの油でほぼ100%稼働しています。この発電所の発電出力は145Kwで、年間1,252,800Kwhを発電。これは年間一般家庭350世帯分の電力に相当し、およそ3リットルの廃食油で家庭一軒一日分の電力をまかなうことができる計算です。

 

事業展開をしているのは株式会社アーブ。群馬県内、高崎、藤岡、前橋、伊勢崎・埼玉県、栃木県などで使用済み天ぷら油を回収し、リサイクルしています。小さな地元の会社ですが、環境運動としての広がりで、発電まで14年間、市民参加の食用油を利用してきた実績がありました。公的機関や民間団体の協力を得て、市民団体には㎏2円を支払って、1ヶ月平均4,850㎏の食用油を集めます。また、回収容器は株式会社アーブが無償で貸し、使用済み天ぷら油の無料回収する仕組みも作りました。

 

以前は回収した廃油は精製してバイオディーゼル(BDF)燃料化して、軽油に5%混ぜて販売してききました。しかし、売り上げが伸びないのです。そこで新しい発電事業にも着手しました。「誰もやっていないから、申し込みのひな形もなかったのです。けれども経産省はFIT販売で認めてくれました」と取締役事業本部長須藤弘之さんは話しています。

 

その仕組みは次のとおり。網でカスを取って、タンクに半日静置。円錐分離機を利用して、次のタンクに移し、2日置き水分を取り除きます。5ミクロンのフィルターを通してから3本目のタンクで静置すると、黒かった油がすっかりきれいになります。この工程では発電所の廃熱も利用しています。

 

更に、こうした技術を発展させ、BDF燃料精製、バイオマス発電事業での経験と実績を元にバイオマス発電施設の設計や施工も手掛けるようにするようになりました。

 

 

「市民の力の結集し、その思いを多くの人たちとわかちあい、共に行動したい」というのが、会社の理念です。


初出「市民発電所台帳2018」

廃食用油利用の藤岡バイオマス発電所、集めた廃油
廃食用油利用の藤岡バイオマス発電所、集めた廃油

その8

神奈川県川崎市

 

川崎バイオマス発電所と京浜バイオマス発電所   ~地産地消の住宅廃材利用VS輸入木質ペレット利用~

地産地消の住宅廃材利用の川崎バイオマス発電所
地産地消の住宅廃材利用の川崎バイオマス発電所

神奈川県川崎市

川崎バイオマス発電所と京浜バイオマス発電所

~地産地消の住宅廃材利用VS輸入木質ペレット利用~

 

 川崎臨海部にバイオマス発電所が2ヶ所ある。20112月に運転開始した「川崎バイオマス発電所」と201611月に始動した「京浜バイオマス発電所」だ。

 

 植物は太陽光を受けて大気中のCO2と吸収した水で成長する。この植物を燃やしても、CO2は増えることも減ることもないので、バイオマスはカーボンニュートラルと言われ、再生可能エネルギーに含められている。だが、この言説には問題が多い。「バイオマスについて日本のFIT制度は諸悪の根源だ」という人もいる。川崎の二つのバイオスマス発電を比較してみよう。

 

 川崎バイオマス発電=トップ写真=で利用する燃料は、周辺地域で発生する建設廃材から作られた木質チップ。ここに1日約600トン、年間18万トンの住宅廃材が集まる。東京4割、横浜3割、川崎2割、神奈川県内1割とすべて地域から生まれたものだ。隣接のジャパンバイオエナジーに住宅解体業者はお金を払って処理してもらうために運んでくる。それを50ミリ以下にくだいて発電会社にチップを販売。回収した鉄も鉄くず会社に販売している。このチップを利用した発電出力は33千kW。一家庭約38千世帯の電気量に相当する。下写真の缶コーヒーの絞り粕=下の黒く見えるもの=や味の素の大豆の絞り粕も利用している。 (数値は2017年取材当時のもの)

 

また、新電力会社「みんな電力」はここ「川崎バイオマス発電」の電気を新宿マルイ本館供給。ブロックチェーンを活用して、20189月は20..8%の電気を利用したと発表していた。(しかし、今は契約解除になっている)

 

川崎発電所の方は「私たちは国内のものだけを使っている。海外の輸入に頼っている京浜バイオマス発電所とは違う」と強調していた。

 

 一方、国内最大級の京浜バイオマス発電所はカナダから輸入した木質パレットとインドネシア/マレーシア産パーム油脂の殻を燃料としている。一般家庭の約83千世帯分の年間消費量の電力を送電することができる。埠頭に隣接するので、ベルトコンベアで直接発電所内の貯蔵施設まで運べる。「たまには『海外から仕入れて電力を作ると言っても、そこに至るまでCO2を一杯出すのではないか』と意見をいただきますが、実は国内でバイオマス燃料を仕入れトラックで運ぶことを考えれば、CO2の排出量は少ないのです」と所長は「かわさきエコテック・ニュースレター」20163月号の中で述べている。

 だが、パーム油は世界で最も消費量が多い植物油であるが、環境破壊など起こしている。更にFIT認定され、私たちの消費者の電気代に上乗せられています。こうしたバイオマス発電所は「世界的規模での森林破壊に加担」しているとの意見も多い。この京浜バイオマス発電所を川崎の環境事業としては紹介するには疑問だ。

 

 NPOバイオマス産業ネットワークの泊みゆきさんは、「バイオマスでも非常によい利用から悪い利用まで千差万別」と語る。「バイオマスは海外においても悩ましく、政策担当者泣かせの複雑さがあります」。この京浜パイオマ発電所について、「一般見学は受け入れてないようですが、特別に見学させていただきました。これでもすごく悪い部類ではなく、まあ中間位でしょうか?」と話してくれました。というのは海外の木質バイオマスについては認証のあるものを選択しているそうだ。

 

それだけ日本のバイオマス発電には問題が多いようだ。

 

撮影・取材 高橋 2017.7.26

 

市民電力連絡会で「川崎バイオマス発電では廃材を買い占めている」と批判があったので、採用されなかった。取材当時の原稿を少し変えた。

関東周辺集積された廃材の山
関東周辺集積された廃材の山
廃材の他、缶コーヒーの絞り粕=下の黒く見えるもの=や味の素の大豆の絞り粕も利用。口減のため住宅解体減少のための対策のひとつ
廃材の他、缶コーヒーの絞り粕=下の黒く見えるもの=や味の素の大豆の絞り粕も利用。口減のため住宅解体減少のための対策のひとつ
川崎臨海部にある国内最大級の「京浜バイオマス発電所」。昭和シエル石油会社100%出資。ボイラーの棚さは地上約60m。見学の計画はあったが、断られた。川崎発電所の敷地から撮影。
川崎臨海部にある国内最大級の「京浜バイオマス発電所」。昭和シエル石油会社100%出資。ボイラーの棚さは地上約60m。見学の計画はあったが、断られた。川崎発電所の敷地から撮影。

その9 番外編

水素社会で未来社会を描けるか?

「東京スイソミル」という水素情報館
「東京スイソミル」という水素情報館

【水素社会で未来社会を描けるか? 】

 東京都江東区JR「潮見駅」より徒歩8分に「東京スイソミル」という水素情報館がある。

 

 水素は、「(CO2ではなく)水しか出さない」、「様々な資源から作られる」、「ためられる」。これは今までのエネルギー問題の解決につながる重要な項目であると、職員が新しいエネルギーとして説明してくれた。ここは20167月に全国初の水素情報館として開館、3年目にして来館者5万人を超えた。「水素社会の将来像を、見て触れて経験しながら学べる総合的な学習施設」。いわば水素のPR館だ。

 

 中には水素普及拡大に向けての東京都ロードマップがある。「水素社会の実現に向けた取組を着実に進め、2020年を契機に水素エネルギーの普及・拡大を図」り、水素燃料電池車6千台、バス100台以上を普及する計画だ。

 

 しかし、2020年には水素ステーション35ヶ所を作る計画だが、現実は、水素ステーションは現在都内には14ヶ所しかない。ガスステーションの建設コストは約1億円に対して、水素ステーションは約5億円かかるのもその一因のようだ。 

 

 見学の2019127日、東京ビッグサイトで開催の「エコプロ2019」でも「本格的な水素インフラを備えた国内初の街『HARUMI FLAG』」のトークセッションが開かれていた。東京・晴海に広がる約18haの区域に、23棟・5632戸の住宅を整備し、約12千人が暮らす街を作る。この街に水素ステーションを設置し、パイプラインを通してステーションで製造された水素を各街区に供給する。「純粋水素型燃料電池が生み出した電力や熱は、街区管理者側が需要家として利用することになる」。

 

 「東京の未来をけん引する街」というのがキャッチコピーだ。このエネルギー事業を担うのは、東京ガスを代表する民間4社グループ。どうやら再生可能エネルギーを利用した水素ではなく、ガスで水素を作り、電力や熱を生み出すようだ。

 

 以上のように、新しいエネルギーとしての水素活用について学んだが、水素を中心の社会は「未来をけん引く」かは、疑問が残った。まず、コストパフォーマンスが悪い。半面、巨大な投資につながるので、産業界には巨大な利益が生まれるかもしれない。水素サプライチェーンを構築し、外国から輸送するとなると、CO2を増やすことにもなりかねない。

 

 ドイツでは、風車の多い北部と工業地帯の南部の間の送電網が弱いので、再生可能エネルギーが余ったときに、再生可能エネルギーで作った電気を「ウィンドガス」として水素に変え、ガスグリッドに流している。その仕組みも整っている。

 

 この例を始め世界の動きは、再生可能エネルギーであり、それを利用した電気自動車にシフトしていくのが望ましいだろう。水素社会に夢ばかりみているようでは、日本のガラパゴス化がここでもまた進むのではないかと懸念する。

 

(放送大学の面接事業「東京グリーン探訪4」(90×9コマの内、3コマを利用してスイソミル館とエコプロ2019年を見学。その宿題の中から一部掲載)

 

上写真:東京スイソミル館内部。(放送大学での発表で地元の方の話では、開館以来展示は少しも変っていない。バスで多量の小学生を運んでいるそうだ)

左下写真:隣接の水素ステーション。地元では反対運動も。

右下写真:エコプロでのパワポ。

注:この文章では水素社会に否定的に論じているが、R水素社会(再エネからの水素)なら大歓迎。でも水素自動車は疑問。公共交通中心が未来の社会と思うからだ。

 

 

撮影・取材 2019127日 高橋喜宣