高橋喜宣が実際に取材してこれまで書いてきた原稿です。
11 東京都八王子市「かあさん牛のヨーグルト工房発電所」牛も人も幸せな牧場に発電所
12 町田市民発電所、生活クラブ理念FEC(フード・エネルギー・ケア)を実現
13 川崎市 マンション管理組合発電所 防災に備え電気を発電
14 群馬県中之条町 ムサシメガソーラー 自然にやさしいメガソーラー
15 原発の町に地域の力で再エネ施設建設 おながわ・市民共同発電所
16 茨城県古河市上片田周辺の再エネ事情と消えゆく里山 2023年 その1
17 ソーラーツリー・プロジェクト、再エネ利用の体験モニュメント各地で展開中
18 城県古河市上片田周辺の再エネ事情と消えゆく里山 2024年 その2
19 茨城県の建設中の巨大メガソーラーと里山
東京都八王子市「かあさん牛のヨーグルト工房発電所」
― 牛も人も幸せな牧場に発電所 ―
写真は、八王子市小比企町にある磯沼ファームにある「かあさん牛のヨーグルト工房発電所」だ。2000㌶の牧場に6種類90頭の牛を飼っている。
「牛も気持ちよく暮らせれば、おいしい牛乳もできる」という哲学で牛を放牧している。つながれている牛は皆無。1日3トンのコーヒーの皮やカス、ココアなどチョコレート工場から運んで牛舎に撒いているので、あまり臭くもなくい。餌にはカットフルーツ工場からいただいたフルーツの皮も混ぜている。牛も幸せそう。左下の写真の牛さんは頭をなでさせてくれた。直径1mの扇風機も7台あり、24時間回されている。ミストの機械も導入。どこかの暑さで殺される病院よりも環境にいいかも。水さえも高尾山から流れる地下水を与えているほどだ。
そんな町中の牧場は、ヨーグルトを作るだけでなく、電気も作ると面白そうで楽しそうだと、屋根を一般社団法人八王子共同エネルギーに屋根貸しした。19.8kW、250wのソーラーパネル80枚を牛舎のひとつに乗せた。電気はみんな電力に販売している。
2018年8月25日、八王子で市民電力連絡会の講座の翌日26日イベントとしての視察を実施。みんな電力の消費者も自分の電気の供給地を市民電力メンバーとともに見学した。
その12
町田市民発電所、
生活クラブ理念FEC(フード・エネルギー・ケア)を実現
2018年に完成した東京都町田市にある「生活クラブ館まちだ」の屋上に、市民発電所が完成した。同館は、2階~5階の4フロアはサービス付き高齢者向け住宅「センテナル町田」(全38戸)、1階には、地域の人や組合員が活動の場として利用できるイベントスペースや「子育てひろば」、生活クラブの食材で料理を提供するカフェなどがある。
この発電所の完成により、生活クラブの理念FEC(フード・エネルギー・ケア)が東京50記念事業として理念を実現したことになる。
2018年3月10日、「町田市民電力太陽光発電所第1号機、完成記念式典・見学会が行われた。多くの人が駆けつけた。衆議院2名、市議や県議も4~5名も披露に参加した。
この発電所は「NPO法人まちだ自然エネルギー協議会」が企画、町田市民電力株式会社が経営している。「2040年自然エネルギー100%への道」を目指し、2020年、30年、40年の町田市の再生可能エネルギーの割合の目標とロードマップを示している。
だが、建設しても未だに系統につないでもらえていない。ある筋の話によると、東電が悪いのではなく、JPEA代行申請センター(略称 JP-AC)が1万5千件の殺到する認可申請に手間取っているからだ。「経済産業省からの委託業務に対応するために設置された独立したセンター」であるからには、発注先であるエネルギー庁がまたも結果的に再生可能エネルギー普及の障害となっていると言えるかもしれない。
「NPO法人まちだ自然エネルギー協議会」と「生活クラブ館まちだ」との共同事業によって、町田市に初の市民電力を完成された。
2018.3.10取材・撮影高橋。当時face bookに書いたレポートを少し変更した。
その13
その13
マンション管理組合発電所
防災に備え電気を発電
宮前区の小高い丘にあるマンション屋上に、合計12㌗の太陽光パネル42枚が2013年に設置された=写真。建設資金500万円は出資金や借入金、また寄付や補助金からものでもない。マンション住民の力と工夫で生み出したお金である。
仕掛人はトーカンマンション宮前平・管理組合理事長の秋里孝寿さん。これまで工事会社の選択や工事方法の工夫で修繕費を黒字化し、管理人や庭の手入れを自営化して得た資金を充てた。きっかけは11年の東日本大震災。計画停電で暗闇の中に放置される経験をして、「非常時にも電気を使えるように」と太陽光発電所を計画した。
エレベーター横に発電量を示すパネルを設置、開始日からの売電総額も表示するなど住民の関心を継続させている。非常時に太陽光の電気を誰でも使えるように防災訓練も行った。「賛同を得られたのは、無償で管理人を引受けるなど理事長が一生懸命やっていたからだ」と竹内茂副理事長は言う。
この活動に共感した吉岡正子さんは「素人でもできた」ノウマウを広めようと紹介DVDを制作、今年マンション管理組合発電所を設立、「日本人に必要なことは他人任せにせず自ら行動すること。私も自ら行動うべきと思い代表を引受けた」と語る。
(市民記者・高橋喜宣)
2017.11.19 取材後、改めてマンションエレベータホールにて撮影。
このシステムはマンションの住民によってつくられている。
その14
群馬県中之条町
ムサシメガソーラー
自然にやさしいメガソーラー その1
通称「ムサシメガソーラー(沢渡第1太陽光発電所)はかつてスギやヒノキの苗を育てた国有林旧苗場だった。その使われなくなっていた遊休地(標高634m)に建てられた。
2022年4月22日に訪れたときに、当たり一面にタンボボが咲き乱れていた。
「ここの除草はどうしていますか? 」と著者。
「業者に頼んでいます。除草剤は一切使っていません」と中之条パワー 代表取締役の山本政雄さん。
著者はこの地を訪れるのは3度目。けれど、このことを知らなかった。当日見学の前に、株式会社中之条パワーの山本さんから1時間にわたり、講演をしていただいたが、こんな話はでなかった。
中之条町は人口1万5千人、森林が8割以上という消滅可能性のある自治体だ。かつての主力産業であった農林産業は衰退し、里山と荒廃と鳥獣被害に悩んでいた。そうした中2011年の東日本大震災と電力自給の不足に出会った。そこで、原発に代わるエネルギーを自治体で責任をもって探る試みがされてきた。
その結果、大震災から2年後の2013年6月18日に「再生可能エネルギーのまち中之条宣言」が行われ、同じ年の6月27日「再生可能エネルギー推進条例」を制定。基本理念として、「エネルギーの地産地表のまちづくり」「地域が発展する」「持続性のある活用」などが挙げられた。
そして、13年8月には町役場の中に「一般社団法人中之条電力」を設置。14年には町の公共施設に電力小売本格供給開始。15年に中之条電力から中之条パワーに特定規模電気事業を継承している。
その中、第一号の「ムサシメガソーラー」が13年10月に稼働した。発電出力2395kW、系統出力1990kW、太陽光パネルはサムソン製9380枚。40円/kWh(当時のFIT価格)で
町は中之条パワーに販売している。
このムサシメガソーラーは山の中にあるせいか、2度ケーブルカーも盗難にあい、1mの積雪にパネルの一部が破損するという被害もあった。保険でカバーできたが、休業保障はされなかった。
町事業として他2ヶ所合計3ヶ所のメガソーラー、他に町有地に民間誘致のメガソーラー1ヶ所、小水力発電所一か所がある。
これは町が再エネ条例を作ってまで、再エネを推進してきた結果といえよう。
(続く)
参考資料
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/10421/668224?city-product_rank
中之条パワー公式サイト (nakanojo-power.jp)
撮影・取材 高橋 2022.4.22
群馬県中之条町ムサシメガソーラー 追記】
―自然にやさしいメガソーラー その2 ドイツ 自然共生型の太陽光のデザイン―
「山に太陽光パネルが大量に並べられている写真は、『環境を無視したメガソーラー』と受け止められかねなになーと感じます」と学習会チラシ案裏面の写真にムサシメガソーラーの写真を使ったら言われました。
市民発電所の仲間でさえこう言われるのは、メガ―ソーラー、取分け自然破壊型ソーラーへの反発の現れでしょう。諸外国と比較すると、メガソーラーも自然と共生できることが分かります。著者の書いた分の引用です。(若干訂正)
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ドイツのモースホーフ・ソーラーパーク(出力4.5MWの太陽光発電施設)では、模範的な自然推進型対策が地域の自然保護団体との協力で行われている。ここは南ドイツ・ボーデン湖北部の鉄道線沿い17haの農地に2011年に建設された野立て太陽光発電施設で、この地域では最大規模のもの。地域の自治体エネルギー公社と市民エネルギー協同組合、そして市民エネルギー企業のソーラーコンプレックス社(開発・運営担当)が共同出資した。在来種の草原群落の種をまき、草刈りは年に2度だけにするなどして、従来の畑では見られなかったような数多くの昆虫や植物、そして動物が生息するビオトープ空間だ。刈り取った草は、近隣のバイオマス設備で発酵原料とされている。
スイス在住の環境ジャーナリスト滝川薫は次のように記載している。「ドイツで見られるごく普通の野立て太陽光発電では、元来の地形を変えることなく、架台にはコンクリート基礎を用いず、杭を土中に押し入れただけの造りになっており、自然への介入を最小限にとどめている。パネルの下の緑地を砂利舗装することは有り得ず、また除草剤の利用は禁じられている。パネル下は定期的な草刈りにより管理された草地であり、発電設備が寿命に達すれば簡単に設備を撤去し、元来の状況に戻すことができる。
ドイツ各地で行われた多くの調査によって、このようなごく普通の野立て太陽光発電所では、従来型の集約的な農業が行われている農地よりも、生物多様性が、大きいことが確認されている。大きな面積において20年以上に渡り農業や肥料が撒かれず、土地が耕耘(こううん筆者注:田畑を耕し、雑草を取り去ること。耕して作物を作ること)されることもないので、現代の農環境の中では生存できない動植物がソーラーパークの中でゆっくりと発展することができるからである。ソーラーパークは地域のビオトープ・ネットワークの一部を補うポテンシャルを秘めているのだ」。
一方、下の写真は神奈川県にあるメガ―ソーラー。もとはここに建物を建設する予定地だったが、建設計画は頓挫して太陽光発電所を建設することになった。配水設備は整っているが、太陽光のパネル下はすべて砂利に覆われて自然のかけらも見えなかった。
(なお、この発電所は自然破壊型メガソーラーの代表例とあげているわけではない)
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・写真はモースホーフ・スーラ―パークの草原は17ha出力4.5MWの太陽光発電施設(©solarcomplex AG)
・下の写真は神奈川県にあるメガ―ソーラー(2014.10筆者撮影)
・前半は筆者が企画した2021.2.19のzoom講座「自然共生型の太陽光デザイン―スイスと南ドイツの事例から」(主催:NPO法人原発ゼロ市民共同かわさき発電所)の内容から。講師はスイス在住の環境ジャーナリスト滝川薫。彼女は植栽設計士で、スイスでは庭園の植栽デザインにも関わる。
・後半の引用は、村上敦、滝川薫、西村健祐、梶村良太郎、池田憲明著『進化するエネルギービジネス 100%再生可能へ! ポストFIT時代のドイツ』(新農林社)p34-35 滝川薫担当の章
・初出:高橋著「日本の固定価格買取制度(FIT)の功罪―政策決定までの問題点を探る―」p9 第二章 諸外国のFIT制度 外国では規制しながら環境とどう調和しているか ドイツ 自然共生型の太陽光のデザイン」より(メニューの2番目下)
特別編
【自然にやさしいメガソーラー その3
産業地帯の再エネパークで、蜂蜜年間100㌔収穫】
「川崎臨海部を脱炭素、省エネ・再エネの生産・供給の一大拠点」と訴えているのは川崎市議団。確かにいいアイデアであるが、もう一歩「グリーンインフラ」の視点を入れて欲しい。
日本の産業を支えていた川崎市南部では重化学工業が衰退し、コンビナートの再編が余儀なくされているようだ。将来、ラストベルト化が進むだろう。再エネパークはその対策になる。(英語: Rust
Belt、錆びた地帯とは、脱工業化が進んでいる地帯を表現する呼称)
「臨海部の敷地の6割に太陽光バネル+風力・バイオマスを組み合わせる=川崎市内の電力使用量の約7割を供給可能だ」と先の提案では試算している。しかし、風車は問題だ。臨海部にある風車が止まっているのを何度も見かけたが、たまたまだろうか。臨海の風力は十分ではないと思われる。「場所があるので風車を建設と、必ずと言っていいほど失敗します」(日本型小型風車を建設している駒井ハルテック風車担当者)。
電気高騰を機会に、工場の屋根に自家発電用の太陽光バネル設置もできる(要風対策)。
もうひとつ産業地帯の再エネでも養蜂が可能な例を紹介したい。(実際に取材に行ったわけではなく、話と文献でしか分からない)。トップ写真は、オーストリアの首都ウィーンにある産業地帯にある。この再エネパークでは、年間100㌔の蜂蜜を収穫している。このパークは再エネの「グリーンインフラ」と言えるだろう。つまり、自然が持つ多様な機能を、インフラ整備や土地利用に活用していく考え方。グリーンとは単に「植物」という意味だけでなく、農地や河川、樹林地、公園などの自然環境全般を指す。
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「今日、産業地帯にあるこのソーラーパークの敷地は緑のオアシスになっています」と首都ウィーンが所有するウイーン・エネルギー公社広報のカスバ―・ポリスは語った。設備容量1MWのリーズィク・ソーラーパークにより都市の貴重な緑地の価値が高まっている。このパークは市内にある同社の地域熱供給地域に隣接する1.7haの空き地に建設され、600人の市民が出資して完成。絶滅危惧種であるハムスターをはじめ、多様な昆虫、鳥類、植物が確認され、開発前よりも多様性が向上した。地元の「NPO都市養蜂家」がこの草原から年間100㎏のハチミツを収穫している。「ミツバチの大量死が世界的に問題となっている今日。農薬が散布されず、多様な草花が長く咲くソーラーバークはミツバチの貴重なビオトープになっている」。
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参考;村上敦、滝川薫、西村健祐、梶村良太郎、池田憲明著『進化するエネルギービジネス 100%再生可能へ! ポストFIT時代のドイツ』(新農林社)p41
・筆者が企画した2021.2.19のzoom講座「自然共生型の太陽光デザイン―スイスと南ドイツの事例から」(主催:NPO法人原発ゼロ市民共同かわさき発電所)の内容から。
左下写真:四国「佐那河内みつばちソーラー発電所」の羊さん。なお、この「みつばちソーラー発電所」は農地をつぶしたものではない。近くのトンネル工事の残土捨て場になって建設した。2016.8.9 高橋撮影
(5) 株式会社佐那河内みつばちソーラー発電所 | Facebook
右下写真:川崎市臨海部にあるメガソーラー、今やメガソーラーを作るだけではなく、
「グリーンインフラ」の視点を考えて
その14
原発の町に地域の力で再エネ施設建設
おながわ・市民共同発電所 その1
宮城県女川町(おながわ)は人口6 千人の漁村と原発の町。合併しないことを決断した町です。そこに、「原発推進派も、反対派も一緒になって再生可能エネルギーに取り組もうと、銀行の融資に頼らず、市民の資金4000 万円で2 基の太陽光発電所を建設しました」と、おながわ市民共同発電所の理事・事務局の高野博さん(79)は話します。そして、最大の特徴は、売電利益から毎年返済のいらない「おひさま奨学金」を支給していることです。東日本大震災と福島第一原発事故を経験し、全国・全世界の支援に心から感謝し、町の再建に臨む町民の思いが込められています。
■ 建設する場所がない、被災地はすべて町有地
高野さんは発電所建設の歩みを次のように語っています。きっかけは、2016 年4 月、宮城県仙台市の「NPO法人きらきら・市民発電所」の広幡文さんご夫婦が私の所に訪ねて来て、「市民発電所を女川にも建設したいので土地を紹介して」というお話でした。そこで相談に乗っていただいたのが元女川町議会議⾧の木村征郎さん(当時町議)。実際に太陽光発電所の実績を知りたいと、同年10 月には女川町から木村征郎町議、阿部律子町議と私の3 人がきらきら発電所の井土浜太陽光発電所等を見学しました。そして「私たちでやりたいのでNPO の設立など教えて」と広幡文さんに頼みました。「何もかも教わりました。おながわ・市民発電所の生みの親はきらきら発電所さんでした」。
女川町は山に囲まれて、畑や田んぼもほとんどありません。東日本大震災の被災中心部は浸水区域ですべて町が買い上げて、盛り土をして換地や水産加工、商業用地等にしています。女川駅前商業施設(住居制限地域)もそうでした。住民は私も含め全員高台に移転。
そこで、町当局に離島である出島の町有地の借用を申し入れ了解を得ました。しかし住民
の同意を得られず、建設計画を保留しました。そこで場所がなく、とても困りました。
原発の町に地域の力で再エネ施設建設
おながわ・市民共同発電所 その2
■ 土地を無償で貸してくれたのは原発推進派
木村征郎議員は議⾧時代、2010 年女川原発3 号機のプルサーマル導入計画に「町は財政的にも経済面でも原発に依存している」と賛成の立場でした。一方私は1943 年に宮城県塩釜市生まれ、女川町立の小学校に赴任してきました。女川原発が建設するということで、原発反対運動から議員になり、11 期務めた町議会では欠かさず原発に関する質問をしてきました。東北電力にも対策をいろいろ提案し、実現もしました。50 年以上の脱原発派です。
それでも、木村征郎さんも理事になってくれました。商工会⾧の高橋橋正典さんは「立場上原発賛成だが、高野さんのライフワークを応援するよ」と、理事になってくれました。
出島の土地問題で窮地に立っていたことを知った高橋正典さんは出張先のミャンマーから国際電話で「使ってないオラの土地を使ってもいいよ」と快諾してくれました。出だしから土地問題でつまずいていた私たちにとって、九死に一生を得た一瞬でした。
理事⾧には地元でドラッグ店を経営し、元裁判所調停員の松木卓さんになってもらいました。加えてNPO 法人「ビホロ」の代表の梶原三雄さんも賛同して理事になってくれました。設立総会は2016 年12 月16 日でした。それから、資金集めに入りました。
女川原発2 号機の再稼働が問題になる中、原発のある町で再生可能エネルギーに挑戦する姿勢と、自然の恵みを子どもたちの奨学資金に活用しようとした目的が多くの共感を集めました。
NPO法人 おながわ・市民共同発電所が宮城県から正式認可されたのが2017 年4月です。それから1 年足らずの2018 年2 月6 日に、「大六天(だいろくてん)発電所(発電出力49.5kW、設備73.92kW)を完成させました。この場所は高橋正典理事が無償提供してくれた土地でした。現状の地形を生かし、264 枚のバネルを2 段にして設置。三陸復興国立公園女川湾が見えます。春から秋にかけては木立の中からわずかに、落葉後には女川原発が良く見えます。設備工事は株式会社プロジェクトウサミ(所在地:宮城県大和町)に行ってもらいました。
更に、この土地を整地してくれた「ビホロ」の梶原三雄理事が、高齢者施設予定地として整備した土地の一部を20 年間無償提供くれました。その土地に、第2 号機の「万石浦(まんごくうら)太陽光発電所(発電出力49.5kW、整備90.7kW、バネル)を建設し、2018年10 月には通電を始めました。
この間、当初の出島の太陽光発電所はコロナの中、住民説明会が持てず、断念しました。2022 年の総会で、売電先は1 号機東北電力と2 号機みんな電力にそれぞれ分けました。
大六天発電所。多少は木材の伐採はあったようだが、樹木を残す配慮があるようだ。
もとはレストランがあったところ。
ここは三陸復興公園の一角。
原発の町に地域の力で再エネ施設建設
おながわ・市民共同発電所 その3
■ 奨学金を支給には書類選考なし
この二つの太陽光発電所で年間400 万円以上の売電収入を得ています。その収益を「おひさま奨学金」にしています。対象者は女川町が実施している貸与型奨学金(無利子60 万円/年)を受けている大学生・専門学生。一人年間2 万円です。書類の審査は一切ないのが特徴です。町⾧と教員⾧にお願いして、町から対象者全員に募集の通知をしてもらい、毎年希望者全員に指定の銀行口座に振り込みをしています。21 年度には19 人に贈りました。
それに、この給付型(返済のいらない)奨学金支給は、理事の私や木村征郎さんが議員のままだと利益供与の疑いがかけられるかもしれません。体調を崩していたこともあり、11 期も務めたので、そろそろ潮時かと、たまたま一緒に議員を辞職しました。
■ 市民のお金で作り上げた太陽光発電所
「利益はすべて社会貢献に使います」と震災復興のシンボルとして資金を募集しました。基金は1 口2 万円、10
年後にお返しします。「ただし利息や配当はつきません」。寄付も1000 円から上限なしで集めました。理事の皆さんも100 万円単位で出資してくれました。これまで合わせて4000 万円以上の資金が寄せられました。
「自然エネルギーは未来への贈り物」として、奨学金制度の原資などの他、地域住民の交流会や「お茶飲み会」を開きましょうという呼びかけもしました。取材した新聞記者からも「素晴らし事業だから」と個人寄付がありました。
事務作業軽減のため、「年度会費なし」の入会金1 万円で正会員になってもらいました。現在、正会員数数103 名です。
■ 課題と理不尽な装置強制設置と出力制限
70 代・80 代の私たち自身の手で太陽光発電所を設置できた、そのことが一番嬉しかっ
たことです。 課題は若い人がいないことです。
東北電力から2 基の太陽光発電所に出力制限装置を付けるよう強制的な依頼があり、総額70 万円で付けました。「化石燃料の発電所を軽減するべきではありませんか。原発再稼働のためでしょうか? 」 そして、実際に今年、2022 年4 月と5 月に2 度も出力制限を受けたのです。
奨学金を受けた学生からは「毎年ありがとうございます」など、感謝の言葉が申込書に添え書きされています。今後、地域の皆さんと一緒になって再生可能エネルギーの地産地表をめざし、発電事業と農業や漁業・水産業の連携で地域産業を活性化して、地球温暖化防止に挑戦していきます。
取材・撮影 2022.5.6 高橋喜宣
その16
再エネ事情(太陽光編) その16
【茨城県古河市上片田周辺の再エネ事情と消えゆく里山に】
「この辺も太陽光バネルが増えてね、あそこもこちらも(発電所を)作っているのよ」と姉。姉の嫁ぎ先は、JR宇都宮線野木駅から車10数分のところにある代々農家の家。茨木県古河市(元三和町)上片田に位置している。その周辺を2日にわたって探索してきた。
この周辺は農地とそれに隣接する雑木林が広がっている。一方、工場の立地もある。この地帯に、近年、次々と太陽光発電所が建設され、徒歩2キロ圏内に優に10ヶ所以上ある。その多くは元雑木林。49.5kWが多く、中にはメガソーラーも存在している。
雑木林は、農家が農業の一部として利用することでできた林で、農村に隣接する「里山」だ。近年、その木材も落ち葉も利用されることがなく、荒れ放題の状況が見られており、ごみ捨て禁止の立て看板もみられます。そんなやっかいもの(言い過ぎだろうか)の処理に困っているような状況だった。中には「売地、工場や倉庫に適切」というような看板もある。
トップの写真は隣町にあるソーラーオーナーズ・小山市東野口1発電所。2022年5月に運転開始した、666kWの発電所。運営会社は東京都千代田区。土地は10数人の地主から借りている。1反(たん、=991.74㎡(平米)を年間10万円で貸しだしているそうだ。新しい里山の活用だが、森林は伐採されてしまった。
下は49.5kWの個人所有の太陽光発電所、「ごみは絶対に捨てないでください」の看板が大きな切り株の中に残されている。2019年12月運転開始。ごみ捨て場になるならの決断かもしれない。
下は今建設中の太陽光発電所だ。雑木林を切った木材が積まれていた。
こうした木材がそのまま残っている発電所も見られ、中には所有者が川崎市の人も。おそらく所有する先祖の雑木林の処理に困り、建設したかもしれない。
しかし、中にはソーラーシェアリング(営農型発電所)も1ヶ所あった。東京の会社所有だったが、農業法人の「農作業者スタッフ募集」との看板もあり、サトイモやらっきょうを作ると記されている。2021年4月に運転開始している。
また、農家さんの家と作業小屋、壁面一般に太陽光バネルを載せた上片田森発電所(38.5kW)も発見。2013年7月運転開始と見た中でもっとも古い発電所だ。
「里山を守れ」というけれど、政府の支援もなく、どうしょうもなく太陽光発電所をつくっている状況でもあるようだ。
2022年1月1日、2日撮影・取材 高橋喜宣
読者の声
・東北や九州に、山林を保有していますが、メガソーラーの勧誘、毎日多すぎて。実家の電話はFAXオンリーにしています。
神奈川の外国企業、多いです。
・バイオマスが唯一エネルギー資源であった頃、里山は薪炭林としてエネルギーを得る重要な場所でありました。其れが戦後石炭から石油にエネルギー転換、其れが日本の高度経済成長を支えたのですが、里山は価値を失ってしまったのでした。
ただ、そこに降り注ぐ太陽エネルギーの潜在的付加価値を可視化する仕組みとしてのFITが制度として導入されたので経済的価値が出てきたのですが、この経済的付加価値が単なるその時点での所有権者に帰属すると言う若干乱暴な人間側の理屈によっている為にあちこちの道具としてのバイオマス=樹木ではなくパネルが置かれまくっているという事なんだしょうが、里山の資源がその地域を支えるのではなく不在地主を富ませてしまうのは平安時代の荘園みたいでもありなんだか其れは違うように思います。
これは現行FIT制度の設計に問題があると見ていいのでしょう。これをどう正すのかは考えられるべきと思います。
・原発有りき、の政府の取り組みが悪いのでしょう。
都市部の建物の屋根にパネルが載っているのを殆ど見かけません。
政府はCO2対策として、里山保護と税優遇、民間建築物へのパネル設置助成を行うべきでしょう。また、災害時に都市部で電気が使えるというメリットも有ります。
その17
●ソーラーツリー・プロジェクト、再エネ利用の体験モニュメント各地で展開中
日本ではまだ、再エネが身近になっていません。このプロジェクトは「気軽に再エネに触れる、電気を作る、灯をつける、そんなことが誰にでもできるのだ! 」ということに気づいてもらうために企画しました。
ソーラーツリーとは「木に見立てた太陽光発電機」。太陽光で発電する太陽光パネルと、太陽光を浴びて成長する木を掛け合わせています。ソーラーツリーは見ていただくだけではなく、みんなで作り、実際に太陽光を利用して発電する体験型モニュメントです。いろいろなイベントのシンボルとして各地で使われていく予定です。
幅と奥行きは約2.25m、高さは2.470m。軽量薄型フレキシブル太陽光パネルを8枚4方向に配置、合計800kWの性能があります。それを3WAY充電器(楽電くん400Wh)に充電。設計はすでに他の場所でも設置したことのある島田昭仁(博士、都市工学)さんに設計、施工、部品調達、完成までお願いしました。無償ですべてポランティアです。
お金はクラウドファンディングで集めました。そこでBERININGO(地球過保護プロダクション)の若い二人にお手伝いをしてもらいました。毎週のようにチームで会合を重ね、このプロジェクトがどう人の心を動かし、お金を出してもらえるか、若者と年配者と話し合いを続けました。その結果、一時はクラウドファンディングの人気ランキイング14位となり、最終的には「アースデイ東京 2023 ソーラーツリー・プロジェクト」には51名が目標金額30万円に対して384,000 円を支援してくれました。
4月16~17日実施のアースデイ東京では、「このソーラーツリーはいいですね。自宅でも設置したいです」という声が複数寄せられ、また、「このパネルは意外と軽いですね。ベランダでも置けそう」と話す人もいました。
次には地方展開として、5月21日「公害・環境、健康、まちづくりフェスタ」の川崎市JR武蔵溝の口駅前ベデストリアンデッキにてスタート。組立中から「これは何? 」「何ワット位発電するの」「意外と大掛かりなものですね」などという反響がありました。新聞にも写真が紹介されました。7月10日、町田バイオエネルギーセンター(ごみ焼却センター)での「3Rまなびフェスタ」では、気候危機に私たちが出来ることを短冊に込めて、ツリーに飾ってもらいました。その1枚には「地球のためにうたい続けます。らぶ&ぴーす」と書かれています=写真。9月18日にはワタシのミライ、同月23~24日に中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2023、同月30日におひさまフェス×星空上映会inかわさき、10月28~29日には所沢市民フェスティバル、11月4日に川崎「街ナカアート203」、12月3日ソーラークッカー全国大会in練馬と続きます。
各地で多くの人に再エネを実感してもらえることでしょう。
【進化するソーラーツリー、街ナカアートのサブステージで活躍】
「ソーラーツリーによる太陽光発電を利用した再生可能エネルギーで開催するエコで環境に優しいステージです」と「街ナカアート」のサブステージで8ステージの度に案内してくれました。
2023年11月4日、川崎市平和公園で行われた「ソーラーステージ」の様子です。観客の目の前で、弾き語り、紙芝居、パフォーマンスが披露され、その音響設備の電気はすべてソーラーツリーで蓄えた蓄電池で行われました。音響設備もプロが使う本格的設備。初めてのことなので、11時10分から15時40分までのステージの電気が本当に足りるのか心配でした。バックアップに化石燃料のポータルブル発電機も用意してありましたが、まったく必要がありませんでした。
当日天気も良かったので、約60wの電気使用量に対して、約120wの倍位発電をしていました。3時以降、太陽がかなり下になっていくと、電気使用量が発電量を上回っていましたが、終了時でも蓄電残量が95%残っていました。これで晴れていれば、ソーラーツリーで小さな音楽イベントにも十分電気を供給できると分かりました。
このソーラーツリーは、設置の都度多くの方の力を借りて、展示の度に少しずつ進化しているのです。遠くは岐阜県中津川、北は埼玉県所沢市など今年8ヶ所で展示してきました。最初は土台の強化に始まり、見栄えを良くしようと緑タープの装飾をデザイナーが考案してくれました。装飾マニュアルも作ってくれました。11月4日、所沢から朝早く川崎の会場にソーラーツリーを運んでくれた一級建築士の吉野さんがその場で持参の工具で土台、幹部の枝部の接合部分の改造を手際よくしてくれました。すべて無償のボランティアです。
3度設置した「川崎ソーラーツリープロジェクト」では、何よりもありがたかったのは、face bookでの呼びかけに応じてくれた無償ボランティアの存在でした。工具持参で2度参加いただいた川崎市在住の関口さんはその一人。初めて会ったと思っていたら、「おひさまフェス×星空上映会inかわさき」の実行員会に出席していただいたときに「実は高橋さんに会うのは3回目。展示会で1度、気候戦士の上映会&ワークショッブでも」。川崎地球温暖化防止活動推進員の嘱託式で隣合わせだった永井さんにも2度来ていただきました。
今年だけでも10ヶ所の各地で展示は行われます。多くの方々に再生可能エネルギーを見て、触れていただけるでしょう。
【エコプロに、ソーラーツリー登場】
2023年12月6日~8日、東京都江東区有明・東京ビックサイトにて開催の「SDGs Week Expo2023 エコプロ2023」GREEN MARKETコーナーにソーラ―ツリーが展示されました。展示したのは、「再生可能エネルギー100%電気のお届けを目指す」電力会社のグリーンピーピルズパワー株式会社。但し、室内なので発電はほとんどありませんでした。
エコプロは産官学民が交流する環境総合展です。一般社団法人サスティナブル経営推進機構と日本経済新聞社主催で毎年開催されています。今年のテーマは「サキをヨミ、現在をカエル力。社会課題解決のための英知が終結」。学生も多く来場、学校や学級ごとに見学に来ていました。
ソーラーツリーは再生可能エネルギーの見える化のために作られたモニュメントです。これまで首都圏を中心に10ヶ所以上で展示されてきました。雑誌「環境ビジネス」の方が「とても素晴らしい」と話をしてくれました。係の人に熱心に長く話をしている方もいました。その人のことを聞いてみると、冷蔵庫のパックアップ電源に太陽光パネルを付けたいが、施行会社から蓄電器を付けないといけないと言われ、相談してきたと言います。
ソーラーツリーによって、再エネの話題が広がるようです。
〇右下写真:潮流発電所模型(長崎県五島市の奈留瀬戸において、2021年1月23日、国内初となる大型潮流発電機(500kW)を海底に設置し、発電を開始)
参考:「潮流発電技術実用化推進事業」発電機の設置工事完了・発電開始について|再エネ発電|お知らせ|九電みらいエナジー株式会社 | 九州電力グループ (q-mirai.co.jp)
〇これまでのソーラーツリーについて
https://fukushima-wasurenai.jimdofree.com/2-再エネ事例太陽光-その2/
17に紹介しています。
再エネ事情(太陽光編) その18
【茨城県古河市上片田周辺の再エネ事情と消えゆく里山】その2
「イノシシ注意の看板がでていた。この辺にもイノシシがでるようになったの』と私。
「この辺の山や林を切り倒し、太陽光バネルを設置するから、イノシシが(住む場所を追われて)でてくるの」と姉。
「うちの田んぼにも、太陽光パネルを設置する話があるんだよ」と姉の連れ合い。
年末年始、退職後、毎年姉の家を訪問している。姉の嫁ぎ先は、JR宇都宮線野木駅から車10数分のところにある代々農家の家。茨木県古河市(元三和町)上片田に位置している。
周辺には太陽光パネルが今も次々と設置されている。下写真1ははるかかなたまで積み上げられた太陽光パネルだ。下写真2のように、中には両面の太陽光パネルもある。
「うちに麻雀しにくる一人が太陽光パネル設置の営業をやっているようでね。あっちこっちにパネルを設置する場所を探している会社なの。そこで、うちの田んぼにもという話がきたのよ」と姉。
「田んぼがなくなると寂しくなるね」と私。
「でもねえ。自分で田んぼをやっているときなら、考えてしまうけれど・・・。今は小作というか、全部近くの人にやってもらっているの」
「できあがった米を一定割合、自家用にもらっているだけだわ。(娘と孫にも)米は送っているけれどね」
「ソーラーシェアリングという田んぼの上で発電するのあるし、電気の出力制限もあるようだ」と私。
「自分がお金を出してやらないし、設置はすべて会社が行ってくれるの。年間にいくばくかの地代をもらうことになるわけ。経営にはかかわらず。会社は儲けるからやるのでしょうね。まあ農地は雑種地なるから、固定資産税は上がるでしょうね。今頃、米は安くなってしまって、買ってもいくらにもならないわ。いくばくかでも、お金になるといいだろうと考えてね」
2024.1.1 撮影・取材 高橋喜宣
これはある農家の一例にすぎないかもしれない。でも、先進国の事例と比較すると。
スイスでは、農家を大事にして、収入保障をしている。NHKの番組でスイス人が「(安全保障のため)食べ物がいくらか高くなってもしょうがない」と話をしていた。そのスイスでは、太陽光パネルの野立て設置はそもそもできないようになっている。しかし、住宅地の上ばかりか、高速道路に設置されている。家庭用グリーンエネルギー蓄電池をより低価格で高効率なものにすることも、太陽光による自家発電の普及に貢献するだろうとスイス当局は言っているそうだ。
また、ドイツでは、木を切る開発をすると、別な場所に同じ面積に木を植えなければならないという法律がある。よって、木を切って、太陽光パネルを設置することは有り得ない。
日本は再エネ先進国と比べれば小学生並みでしかない。しかも、原発の回帰のため、電気は余り、大手電力会社が発電を抑えさせるために再エネの出力制限が頻繁に行われている。2023年4月~9月には「最大で1回当たり原発3基分に相当する約287万キロワットを抑制した(2023年10月16日『共同通信』より)。再エネが無駄になり、業者らが経営難に陥ると困惑している」(青木美希著「なぜ日本は原発を止められないのか?」p16)
〇参考
脱炭素の切り札に スイスのソーラーハイウェー計画 - SWI swissinfo.ch
その後:系統接続制限のため、姉の田んぼには太陽光バネル設置はできませんでした。
読者の声から
・この国は産業立国を目指して徹底的に農業を田舎を買い叩いてきました。太陽光発電って殆どやってる事は農業です。でも、制度設計の失敗で単なる金転がしの道具にされちゃいました。田舎から人もの金が都会の産業資本に動員され、過疎となった田舎の最後に残った再エネ資源までが盗み出されているのです。
この構造的な収奪搾取の構造的な問題を正すことは必要なんですけど、原発でなければ良いじゃないというレベルで考える人たちが多くて結果其の価値を生み出してる資源の重要さに気がつかないままでとても残念な事に田舎は衰退しています。
・このあたりはシェアリングはしていないですね! それに発電をする人も、地域をいかすというより、営業的な感じです。肝心なのはお姉さんが理解していません! これでは運動まで難しいのでは? 原発や石炭火力発電所に対抗するのは、難しそうです。‼
→高橋 ソーラーシェアリングをしているところもあります。
・日本政府はかっこだけの再エネ対応、本気は見えません。
本気でするなら蓄電池を買い易い値段にすべきだろう。太陽光発電には、その他パワーコンも耐用年数10年、それらも含めて買電より安くならなければ国民には手が出ないだろう。
その19
【茨城県の建設中の巨大メガソーラーと里山】
「こんな所に戸建て住宅地街があったのかなあ」
「前の山の木が切られて、ソーラーパネルが設置されて、見えるようになっただけ。100世帯位あるのよ」
「平地なのに山って?」
「ここでは、林を山というの」
退職後、年始年末は姉の家で過ごすことが多くなっています。(ホテルマン生活42年では休みをとれなかった)。これはその時に古河市上片田に住む姉の家までの駅から車中の会話です。周辺は農家や林が多くある田園地帯ではありますが、毎年、次々と新しいソーラーパネルが見られるようになっています。
中でも、上片田字横井戸では、「合同会社ソーラーパーク2号」が事業面積402,319㎡に巨大メガソーラーを建設中です。パネルは550wで62,022枚、パワコンは218台。高圧送電網の下に、新しい鉄塔を建設し、サブ変電所7ヶ所から集められた電気を特高変電所から直接鉄塔に流します。2023年8月に着工し、今年25年2月28日に完成予定です。
東西にV字型にパネルを配置し、効率的に太陽光を取り入れる設計のようでした。近年、太陽光施設の銅線の窃盗事件が多発しているせいか、茨城警察署名で漢字、英語など4ヶ国語で「警戒中」という看板がやけに目立っていました。
わずかですが、残置森林や造成森林もあります。ここはかつて農地と林が広がっていた地帯でした。姉のパートナ―によれば、「林も農地も使わなくなったので、地主たちは喜んで貸したのだ」といいます。
中島敏博・東京工科大学教授の里山の定義「「里山は生活に必要な資材を調達する場として集落で共同所有し、管理された林」によれば、日本のほとんどどこにもそんな里山はないでしょう。ここ上片田の林は荒れてゴミ捨て場にもなっています。「集落でときどき林の清掃をしているけれど、その後にもゴミが捨てられるの。ゴミの集積所が近くにないからか、生ごみを捨てて、カラスが散らかすこともあるのよ」と姉。しかし、初詣した地元の共同管理の神社横の林はとても良く整備されていました。
この地帯には「イノシシ注意」の県の看板も見られ、「イノシシ、わな注意」も見たというと「近所の人からイノシシの肉をもらったことがあるのよ。この当たりは鉄砲禁止だから、わなで採ったかも」と姉はいいます。
「再エネには悪いものと、良いものがある」と主張し農地でのメガソーラーは反対ですが、こうした状況の中、反対一辺倒はどうかと思ってしまいます。
撮影:2025年1月2日 高橋喜宣
・読者の声
・再生エネルギーに巨大ソーラーは似合いません。ょ大ソーラーとなると大手の進出です。庶民の小さな寄り合いが似合います。あとは自治体の協力です。
→(高橋)確かにそうですね。近年、自治体も積極的に再エネ導入に取り組んでいる所がでてきました。例えば、兵庫県加西市では、市が40%出資して、マイクログリッドやPPA事業を展開しようとしています。鳥取銀行も地元で小水力発電所建設をしようとしています。(以上2例は昨年鹿児島県日置市の視察で得た情報)
ただ、個人がやろうとしても、日本では銀行は貸してくれません。一方、個人の小水力発電が盛んなオーストリアでは、小水力発電の200年の歴史があるから、銀行は個人にも多額な融資をしてくれるそうです。
●参考 加西市:分かち合うみんなの電気 蓄電池のまち加西~地産地消エネルギーで結ぶ集落のくらし~
https://www.city.kasai.hyogo.jp/uploaded/attachment/20761.pdf
・「日本では銀行は個人に貸してくれない」については、日本の金融機関の成り立ちと棲み分けにも触れる必要があります。
融資は1)パーソナルファイナンス、2)コーポレートファイナンス、3)プロジェクトファイナンスの3種類があります。
1)は低圧40円から21円FIT野立太陽光の融資もこの手法で、個人属性に依存し年収1,000万円クラスの上場企業勤務正社員で最大6,000万円でフルローンが組めました。なので、富裕層は低圧野立太陽光発電所を3~4サイト保有できたのです。消費者金融のアプラス・ジャックス、あるいは政策金融公庫がレンダーです。
18円、14円FITの融資は貸し倒れリスクが高いとみなされ手を引きました。
2)は信用金庫が地元零細企業に貸し出しますが、与信がよくても月商5倍が限度です。貸し倒れリスクを取れません。なので小水力で必要な1~2億円の融資はありません。あの城南信金はリスクを取っていますが足りません。あくまで企業の主たる事業向け融資であり、小水力の設備には融資しません。この融資限度額が小水力発電の開発を阻害する要因です。自治体が担保保証すれば金融機関は喜んで融資するのですが、個人に自治体が保証するはずもなく。
3)は特別目的会社(SPC)によるTKGKスキームとなり、3大メガバンクや外資銀行の登場です。融資は100億円規模になりますから大規模システムに限定されます。小水力発電は収益性がないとみなされ開発されません。
オーストリアの金融機関はどこが小水力に貸し出しているのですか? その与信担保の方法を知りたいですね。自治体が与信担保しているかもしれません。日本では「役所が特定の個人を優遇し不公平だ」とブーイングが必ずでます。
1)2)はリコースローン(遡及型弁済)、3)はノンリコースローンが適用され、日本は不動産担保や連帯保証人をとるリコースローンですが、海外はそれがないノンリコースローンが使えるかもしれません。ただ、返済金利は貸し倒れリスク分高いです。また、欧州は地震や大洪水が日本に比べると少ないので設備が壊れるリスクは無視してもよいかもしれません。
→(高橋)いつも専門的な見解でありがとうございます。
大変参考になりました。
取材した範囲ですが、小水力発電には日本政策金融公庫が貸してくれているようです。
信用金庫も、例えば、みえ里山エネルギー㈱の小水力発電に総工事費3億6500万円の内、半額融資してくれた例もあります。但し、初めから事業計画に関わってくれていました。
洪水については、オーストリアでも小水力発電所の建設中に大雨で破壊された、という話も聞いています。急流でもない川でした。融資については、オーストリア再生可能エネルキーオーストリア会長のワーグナーさんに通訳を通じて、「全国小水力発電大会inさいたま」に昨年聞いた話ですが、詳細は聞いてません。
【上記の件で読者の声】
・ ・融資は国によりかなり違いがあるようですね。日本は個人保証がすべてです。これが再エネプロジェクト計画をとん挫させる理由の一つと思います。
地球温暖化で洪水の無かった欧州でも洪水被害が頻発しています。オーストリアにおいても今後の新設小水力は融資されないかもしれません。
事業計画は入念にスタディし、採算性がとれなければ事業見送りする決断も大事です。
また、融資の条件として設備を建設するEPC会社の経営が盤石(バンカブル)である必要があります。数億円の融資ですから。建設中に飛ばれたら困ります。前受金をもらって飛ぶ業者がいるんですよ。特に太陽光発電では。
砂防指定地は土石流による設備崩壊リスクがあるので金融機関は貸さないのではないでしょうか?
・野獣や野猫、豪雨に旱魃、モラルの低下…林地や緑地を守るのは、本当に大変です。
技術や資金を含め、なかなか市民団体ではついていけなくなっていますよね。
豪雨や暴風が増えて、洋上風力も苦戦しているみたいです。
時間がかかっても、自分たちの全財産を注ぎ込んでも、自治体や企業を巻き込んで、地熱を進める、というのが、今のところの、私たちの結論です。